平成27年1月に相続税の税制が改正されることから、最近新聞等でも相続税の話題をよく目にします。
みなさんは土地の相続税が劇的に下がる「広大地規定」というものがあるのをご存知ですか?
「広大地規定」とは、対象地について、以下の条件をクリアすれば、路線価での評価額に「0.6-0.05×広大地の面積/1000㎡」という式で計算した数値を乗じることができ、相続税を大幅に下げることができます。納税者にとって大変有り難い規定です。
どれ位相続税評価額を下げることが出来るかといいますと、上記算式結果数値の上限が0.35と定められていますので、路線価評価が大体時価の8割程度になるとして、そこに更に0.35を乗じると、最大で時価のほぼ1/3程度まで下がることになります。
<広大地規定の適用条件>
1.その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な土地で、
2.都市計画法第4条第45項に規定する開発行為を行うとした場合に公共公益施設の負担が必要と認められ、
3.一団の工場用地の地積が5万㎡以上の「大規模工場用地」に該当せず、
4.その宅地について経済的に最も合理的であると認められる開発行為が「中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの」に該当しない
詳しくは、当社HPコラム専門コラムをご覧ください。
「土田先生、こんにちは。実は広大地で見て欲しい土地があるんです。」
久しぶりに、大手会計事務所のAさんからの電話です。私は咄嗟に「来たぞ来たぞ」と思いました。Aさんからの依頼はいつも難題なのです。広大地規定の適用は税額を計算する税理士さんの仕事ですが、広大地規定を使っても良いのかどうかの判断が難しい場合には、不動産鑑定士に相談が参ります。
早速、現場に行ってみました。
数万㎡規模の土地で、現状スポーツ施設として一体利用されていました。
「珍しい利用方法だなあ。」と思いました。
現状がスポース施設用地として一体利用されているとなると、まず、現在の利用が最有効使用なのかどうか判断しないといけません。広大地規定を適用するためには「多数区画の戸建住宅用地として開発することが対象地の最有効使用である」、と結論づけられないといけないのです。ただ、スポーツ施設用地としての利用は通常最有効使用とはいい得ない場合が多いのでこの点は大きな問題にはならなさそうだと思いました。
現況程度のスポーツ施設利用としての事業売上から土地配当部分を推定し、当該土地収益から収益価格を試算すると低位となるだろうと予測しました。
次に、「戸建住宅地分譲」より「マンション分譲や、賃貸住宅経営した方が経済的に合理的ではないか?」という論点を切り崩す必要がありました。
コーチや練習生達の歓声を聞きながら、小一時間位現場をぐるっと回ると、季節の終わりのヤブ蚊にたっぷり刺されてしまいました。
会社に戻り、実務修習生のハマちゃんに、後は頑張って貰うことにしました。
広大地のレポート作りは不動産鑑定の腕を磨く良い勉強になるのです。
まず真っ先に、自治体備付の開発登録簿を閲覧しました。対象地周辺及び更に広域にわたる地域の過去からの開発動向を調査し、開発時期や戸建住宅地、共同住宅地等の態様を丹念に調べました。その結果、地域的開発動向としては戸建住宅地開発が中心であることを確認しました。
再び対象地に目を向けますと、対象地が駅から徒歩圏外であることのほか、対象地の地盤面は道路より20m近く低い北向傾斜地勢で、土地内が更に段状となっていること、間口が敷地に比して狭いこと等、個別条件がマンション用地として見た場合に不適合であると思われました。
中小規模の分譲マンションは見られますが、周辺に大型マンション分譲がなく、新規での大型マンション開発には相当の開発リスクが出てくるものと考えられました。
また、取引事例、賃貸事例、現在募集中の戸建住宅やマンション情報をもとに、複数の地元不動産業者さんから取引状況をヒアリングしたところ、対象地周辺を戸建住宅地域として認識されておられる状況や周辺の中古マンションの価格が低廉であり、新築戸建住宅についても手頃な価格で購入が可能であり、投資採算が成り立つような新築マンション分譲事業は厳しいとの心証を得ました。
以上から、対象地についてマンション用地としての利用は経済合理的では無いと判断致しました。
賃貸住宅としての一体利用については、こちらについても、中小規模の賃貸共同住宅は見らますが、大型の賃貸共同住宅が周辺に存在しない点、地元の業者さんからのヒアリング等を基に賃貸需要動向が今後先細りであるものと判断されること等から大型賃貸共同住宅経営の可能性も否定できました。
さて、残るは、対象地について、一般的に「対象地の最有効使用が、道路等の潰地の発生する戸建住宅分譲地である」と判定出来るかどうかです。
先の、自治体備付の開発登録簿閲覧によって、地域的開発動向としては戸建住宅地開発が中心であることを確認できています。
ここで、対象地に関して専門の設計会社に依頼していた「戸建住宅分譲開発計画図及び造成見積書」による開発計画内容が地勢地盤等の自然的条件、法令等を満たすことはもちろんのこと、実際需要が見込めるかということも含めて妥当性を検討致しました。鑑定業者としては開発専門会社の成果物だからといって鵜呑みにすることは許されないのです。
上記図面等を基に開発法によって戸建住宅分譲地としての価格も試算してみますと、経済合理的に見て妥当な試算価格となることを確認しました。
これで、対象地の最有効使用が戸建住宅地分譲、即ち広大地規定上の「多数区画の戸建住宅用地として開発することが対象地の最有効使用である」、と結論づけられたことになります。
開発計画図付で意見書を提出致しましたところ、会計事務所さんからは、詳細な意見書だと喜んでいただけました。ハマちゃんご苦労さまでした。
なぜかここに来て、広大地判定の仕事が立て続けに来ておりまして、ハマちゃん頭を悩ませています。
※守秘義務遵守のため、不動産、人物等が特定されることないようフィクションを混じえています。
あいきの相続業務
あいきの不動産鑑定 ご利用者様の声
広大地の評価をしていただきました。
申告期限が迫っている中、迅速に対応していただき、大変助かりました。
評価についても、土田さんは常に自信を持った評価を出してくれるので、こちらとしても安心感があります。また困ったときはお力をお貸し下さい。
今後ともよろしくお願いします。
いつもお世話になっております。
税務についてわからない事がある等で何かと先生には教えていただき、感謝しております。
私は一か八かの鑑定は「適正価格を示す」事が職責の不動産鑑定士の仕事としてはあってはならない事だと考えています。ご依頼者が達成すべき真の目標は何か、しっかり理解した上で、適正価格を追求する。このような鑑定活動ができたらと考えています。
今後ともよろしくお願いします。