2012年06月06日
先日ある企業から問い合わせが入りました。
「空中権を買い取りたいのですが、先生、そんなこと聞いたことありますか?鑑定できますか?」
私、空中権についてはっきり知っている訳では無く、もちろん鑑定は初めてです。
でも日頃、愛妻から「まずどんな仕事でも快く引き受けること」と言われているので
元気よく「はい出来ます!」と言ってしまいました。
さてここから大変なことになりました。いろいろと調べて空中権の移転とは容積率の移転のことであることがわかりました。
この先具体的な話についてはとにかく「神戸市役所の建築指導課」に行って訊くことにしました。
最近神戸市内でも、「この地域にこんな高さの建物が建つかなあ?」と思うようなタワーマンションが頻繁に建設されています。ひょっとしたら空中権の移転と関係あるかもと思い、ついでにそのことについても尋ねようと思いました。
担当職員の方が大変丁寧に教えてくれました。
神戸市で容積率の移転が出来るのは次の制度を使う場合とのことです。
因みにタワーマンションは3の総合設計制度を使っているそうです。
1.連坦建築物設計制度
平成12年4月に本制度が出来てから、神戸市では2年に1件程度しか申請が無いものの適用の可能性がないことはないようです。
既存建築物の存在を前提とした合理的な設計により建築物を新築する場合に、それらの複数建築物を同一敷地内にあるものとみなして、容積率の緩和等が有ります。
2. 一団地認定
建築確認上、既存の建物と新築建物とが1棟の建物であると見なすことが出来る場合には、1つの敷地と見なすことが出来、建ぺい率、容積率、日影規制、斜線制限等の建築基準法上の規制について緩和されます。既存建物のある土地所有者にとってのデメリットは、既存不適格部分についても一体建物の一部として新法が適用され、改修等が必要となるかもしれません。また今後一体建物の一部について建替、改修等が必要となった場合、一体建物全体について審査が及び、自由に行うことが困難になるとともに、所有者相互に協力義務が生じます。
3. 総合設計制度
一定規模以上の敷地面積を有し、一定割合以上の敷地内空地(公開空地等)を確保する建築計画で、神戸市長が認めたものについて、建築審査会の同意を得て、容積率制限及び道路斜線・隣地斜線制限を許可により緩和する制度です。
土地が接面する全道路について歩道(公開空地)が必要等の条件を順次クリアーする毎に、最大で現在の容積率の1.5倍まで容積率が緩和されます。
空中権の「鑑定」については、結局「地役権の鑑定」という形になり、かなりややこしいことになりましたが何とか解決でき、依頼者の方に喜んで頂けました。
— 不動産鑑定, 不動産鑑定(その他) —
「空中権」知ってますか?
2015年5月14日