不動産鑑定, 簡易鑑定

「簡易鑑定」と「本鑑定」

2013年03月28日

よく簡易鑑定の依頼を受けますが、「簡易鑑定が無くなった」のはご存じでしょうか?

平成21年9月「不動産鑑定評価制度改正に関する指針等」((社)日本不動産鑑定協会)によって不動産鑑定士は「簡易鑑定」を行ってはならないこととなったこととなりました(詳しくは当社にお問い合わせ下さい) 。

裁判では精神鑑定等で簡易鑑定が行われておりますが、不動産について法令上「適正価格」や「時価」を求める場合には、原則として「不動産鑑定評価基準」という法令に全面的に則った不動産鑑定(本鑑定)を行わなければなりません。
この点は費用や期間が限られているので簡易鑑定で良い、という訳にはいかなくなりました。

不動産鑑定(本鑑定)によって求めた「正常価格」のみが「適法」な「適正価格」や「時価」です。
簡易に評価を行う場合には成果物である書面に「簡易鑑定」という名称を付けてはならず、「不動産価格意見」もしくは「不動産価格調査」等としなければなりません。
これら「不動産価格意見」、「不動産価格調査」で求める価格は「正常価格を目指した価格」であって「正常価格」ではありませんので、原則として不動産の「適正価格」や「時価」にはなり得ません。法令上の根拠がある場合にだけ例外的に「時価」と見なされる場合があります。
法令上の扱いが「不動産鑑定(本鑑定)」と「不動産価格意見」「不動産価格調査」等では全く異なります。

「不動産鑑定(本鑑定)」による鑑定評価額と「不動産価格意見」「不動産価格調査」による価格では誤差がどれくらい生じるのかと尋ねられることがありますが、これは現実に不動産鑑定を行わずに判定するのは困難な事項といえます。
前者でも適正価格を目指して評価を行うわけですが、手続きが簡便であるため詳細な手続きを踏む本鑑定を実際に行うと様々に誤差が生じるのです。

「不動産鑑定評価基準」という法令に不動産鑑定を行う際の技術規範が定められていますが、「不動産鑑定評価書」という書面を発行する場合には原則としてこの不動産鑑定評価基準に全面的に則って作業を行わなければなりません。もし一部でも不動産鑑定評価基準に則らないで簡便に評価を行う場合には、「不動産価格意見」又は「不動産価格調査報告」等という書面の発行となります。
但し、これら簡便な評価も次のような「一定の場合」しか行ってはなりません。

簡易な評価書が発行できる場合

•同一の物件に対して再評価を行う場合で前回評価からあまり期間が経過していない場合
•交渉の材料等「手元資料」としての利用に留まる場合
•利害関係人全員から鑑定ではない簡便な評価書であることについて承諾があり、かつ簡便な評価で対応することに合理性がある場合
•実現性や合法性等の面から鑑定を行うことができないが社会的にみて評価を行う合理的な意義がある場合
•「証券化対象不動産の継続評価の実施に関する基本的考え方」(及び協会の証券化実務指針)に則っている
•「財務諸表のための価格調査の実施に関する基本的考え方」(及び協会の財務諸表実務指針)に則っている


上記のような法令改正の背景には、主に民間の分野で「不動産鑑定評価書」という名の下に粗悪な評価が出回り、いわゆる鑑定書の質の低下(モラルハザード)が生じて来たことに対して、国や協会が手を下したものだと思います。
弊社はこのような法令改正より何年も前から、業界のこのような状況に対する危惧から、「不動産鑑定書」と「簡易な評価書」の峻別を行っておりました。当然の法令改正であったと思いますが、簡易な評価に対する依頼者の方の評価ニーズは実に様々で、依頼内容に応じて、評価方法を千変万化させて対応していくのが不動産鑑定士の腕の見せ所でもありました。今回の法令改正は縛りが強すぎて、今後、社会の様々な評価ニーズに対応していけるのか心配もあると思います。


弊社は簡易評価の分野でも実績があります。
お気軽にご相談下さい。

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