2013年11月20日 ある法人から私の携帯に久しぶりに電話がありました。この法人は医療モールで調剤薬局も営んでおり、その医療モールに入室する全テナントのクリニックと取引を行っています。 この度、医療モールの家主さんがテナントのクリニック全部に対して賃料の増額改定を申し出ており、先の法人の不動産開発部がクリニック全部の賃料交渉について取り纏め交渉を行っているとのことでした。医師達との会議の中で、今後の為にも専門家に一度賃料を見てもらおうということで、弊社にお呼びがかかったようです。
ところで、賃料の鑑定といいましても、新しく契約を交わす際の賃料(新規賃料)を求める場合と、継続中の賃貸借における改定賃料(継続賃料)を求める場合があります。今回は後者です。継続賃料の鑑定の場合、4つの物差しで4種類の賃料を求めます。そして最後にそれらを関連づけて合理的な継続賃料を求めます。4種類の賃料とは次のような賃料です。
○元本と果実との関係に着目して、賃貸している土地・建物の価格を求め、これに適切な利回りを乗じて賃料を求めます。利回りは前回の合意賃料の土地・建物に対する合意利回りを用いたりします。今回の合意賃料の利回りは住宅やオフィス等の収益物件の標準利回りより高めでした。運営がうまくいっている医療モールの収益力は他の不動産より高いようです。
○現在の賃貸条件と同条件で新たに賃貸契約を結ぶことを想定した場合の新規適正賃料と現行賃料との差額について、家主に帰属する部分を判定の上、現行賃料に対して当該家主帰属部分を増減させて賃料を求めます。貸主・借主双方の公平に配慮して、差額の半分を家主に帰属させるのが一般的です。
○現行賃料を定めた時点から現在までの経済変動率を現行賃料に乗じて賃料を求めます。経済変動率は名目GDP、 消費者物価指数(家賃指数)、企業向けサービス価格指数(不動産賃貸)等、賃料に関連性を有すると思われる指数によって求めます。
○対象物件と類似する継続中の不動産賃貸に係る賃貸事例と比較を行って対象不動産の賃料を求めます。これは分かり易いやり方ですが、継続中の賃貸借の条件は当事者の個別的事情に左右され、対象不動産に類似する賃貸事例が無いものです。
以上4賃料を求め、それらを関連づけて継続賃料を求めましたが、全てのクリニックで現行賃料より低めに出ました。つまり、家主さんはテナントクリニックに対して賃料増額を申し出て来ているのに、鑑定では逆に、継続賃料が現行賃料より安く出てしまったのです。しかも全てのテナントで。
「紛争になるかも・・・」と心配しつつ、法人の役員に早速電話しました。
私:「全部のクリニックの継続賃料が現行賃料より安く出てしまいました。どうしましょう?」
役員:「そうですか・・・。わかりました。そのまま出して下さい。」
私:「争うおつもりですか?」
役員:「実は弁護士さんとも相談を進めていて、それも視野に入れて考えているのです。」
もし賃料訴訟ということになれば、鑑定を行った不動産鑑定士も渦中に巻き込まれます。争いごとは出来ることなら避けて通りたい思いですが、今回の鑑定額は充分に精査を重ね、公正に出したものです。結論を変えるわけにはいきません。 後は円満解決の方向に進むことを神に祈るばかりです。
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あいきの不動産鑑定 ご利用者様の声
神戸にある飲食店ビルの賃料鑑定をしていただきました。
スピーディーで気持ち良くしていただき感謝しております。仕事に関する姿勢(そこが一番いいかも)に情熱を感じます。
これからもよろしくお願い申し上げます。
ありがとうございます。
裁判期日の中での鑑定ですので、弁護士さんとご依頼者が鑑定に基づき戦略を練る時間をできるだけとれるよう、今後も鉄壁かつスピーディーな評価を心掛けます。
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