2010年11月26日
先日建物価格について基本的な求め方を御紹介致しました。
今回は更に一歩踏込んで、建物価格について説明してみたいと思います。
前回建物の価格が解りにくい理由について、取引事例が無いためと説明致しました。
つまり、市場で取引される建物は種類や築年数が様々であり、
さらに通常土地と建物が一体として総額にて取引されることにより、
建物のみの価格が表面化しにくいものです。
その上で建物価格を求める方法として、不動産鑑定評価手法の中の原価法を
次のような設例を用いて説明致しました。
因みに原価法は建物の再建築費用を想定し、そこから経過年数等に応じて減価を行う
ことにより建物価格を求めるという方法です。
(問)
再建築費用2000万円、築10年の木造住宅の価格は幾らでしょうか?
建物本体の建物全体価格に占める構成割合を90%その耐用年数を25年、
設備部分について建物全体価格に占める構成割合を10%その耐用年数を20年とします。
(解答例)
①建物本体部分の現在価格は2000万円×90%×(25年-20年)/25年=1080万円
②建物設備部分の現在価格は2000万円×10%×(20年-10年)/20年=100万円
建物価格は①+②=1180万円と計算致します。
以上のやり方は建物の物理的態様に即応して価格を求める方法といえます。
つまり対象建物と同程度の建物を新たに建築するとしたら幾らかかるかを予測し、
そこから経過年数に応じて減価が進み、一般人がみて耐用年数が終わると思われる頃には
ついに0円となるという現象、に応じて価格を求めていく方法です。
物理的要因としては通常の老朽化以外に、震災による損傷等もあります。
この様な理由による損傷は別途減額が必要であり、
修理費用相当額が減額されることが多いです。
建物の市場価格をより詳細に求める場合、以上のような物理的要因の他に機能的要因や
経済的要因についても検討し、減額等していきます。
ここで、機能的要因としては、建物が物理的使用可能性があっても、
デザインが大変奇抜であるとか、間取りやタイプが著しく古い、
設備の旧式化が著しい等です。これらの場合、一般の買い手が納得
するようであれば、相当程度の値引(減額)で良いでしょうが、それが無理な場合は、
思い切って改修費用程度の減額を行うことになります。
次に、経済的要因としては、例えば、対象物件が旧来からの商業地域で衰退化が進んでいる
ような地域にある古い店舗であるといった場合、敷地価格が下がることはもちろんですが、
経過年数に応じた対象建物の物理的価値に加えて、店舗建物としての市場性が落ちてくるもの
と考えられます。
また、対象物件が周辺の住宅化が急速に進む住宅地域の中の工場である場合等の場合には、
周辺地域と対象建物との間に用途面で不適合が生じていると考えられます。
この様な場合対象建物に物理的使用可能性があっても、工場建物としての市場性はやはり
相当落ちるものと考えられます。場合によっては現状工場建物を取毀して住宅地として売却する
方が高く売れる場合も有ります。
この様な場合は建物に使用可能性が残されていても価格は0円となるでしょう。
以上のように原価法は建物価格について減価要因と減価額を細かく検討していきますので、
説得力を有する価格を提示していくことが可能となります。
建物価格の求め方 2
2015年5月14日