2010年12月02日
昨日、調停委員対象の家庭裁判所セミナーが司法書士会館で行われた。
基本内容についての裁判官による大変わかりやすいセミナーであった。
内容概略は次のとおりであった。
・調停や審判における遺産の範囲は、
相続開始時かつ遺産分割時に存在する未分割の財産である。
・保険については相続人が受取人となっているものについては
遺産ではない。但し、この判断により相続人間において余りに
不平等な結果が生じる場合には別途考慮する(最高裁の確定判例)。
・預金については
相続時に各相続人に法定相続に従って分割される。従って
預金は原則調停や審判では遺産の範囲に入らない。
但し、相続人各人が自己が相続人であることを立証しても
銀行等は支払に応じないので、預金支払請求の民事裁判を
起こすことを余儀なくされる。これを嫌う場合には相続人
全員の同意により調停で分割を行っても良い。
・被相続人の死後に、ある相続人により預金の引出が行わ
れている場合
被相続人の借金返済・入院費精算・税金等に支払った場合は
やむを得ない出金といえる。
被相続人から遺贈を受けたと主張する場合は持戻しが必要であろう。
相続人が自分で費消した場合には、他の相続人は当該相続人に対して
不当利得返還請求の民事裁判を起こすことが出来る。
・寄与分の主張については
特に現在では介護について問題が増えているが、単に親と同居して
いたというだけでは寄与分は認められず、親が重篤な介護状態にあり
相続人の介護により、介護料の支払いを免れたということを、
明確に立証しなければならない。
・不動産の分割について
売れそうな物件ならば、価格が争点となる場合には大手不動産業者
複数社の査定を取り、その中間値を採用する等の方法が使える。
相続人数人が不動産を欲しがる場合には、入札する等の方法も有効
である。競売に付すという方法もある。
逆に相続人の誰もが不動産を欲しがらない場合には、ババ抜きをする
方法もある。
・賃料について
相続開始後遺産分割時までの賃料は法定相続で分割となる。
相続人の誰かが収受している場合には、預金と同じく、民事裁判で
返還請求するか、相続人全員の同意により調停で分割を行っても良い。
あいきの相続業務
遺産分割セミナー 覚え書き
2015年5月14日