〇民事信託と商事信託
・民事信託は反復継続的に行うものではなく、不特定多数の委託者を予定していない。家族や親族、同族会社などが受託者となる。
・商事信託は信託銀行や信託会社等の金融庁免許業者が受託者となる。
〇土地信託と不動産管理信託
・土地信託:信託された土地を受託者が有効活用する。受託者は事業計画の立案、資金調達、建築会社選定、テナント誘致、完成後の管理運営等の業務を行う。
・不動産管理信託:建築済物件を受託者が運用管理する。
〇不動産信託のメリット
・信託した財産は預金等と異なり、信託法により、分別管理が義務づけられており倒産の影響は受けない。
・委託者は直接的な借入名義人とならない。借入は信託会社が行う。このため、子供がいない等で保証人がない、頼みづらい人でも不動産の有効活用が可能となる。但し、借入リスクが無いわけではなく、家賃で返済できない場合には担保処分があり得る。
・委託者は賃貸経営から解放される。受益者は3ヶ月ごとに配当収入を受けるだけになる。信託会社が入居対策、修繕コストの削減等を効率的に行う。
・税務手続きが簡素化される。信託会社が3ヶ月ごとに発行する収支報告書を使用することで確定申告が容易となる。相続評価は自分で借入れして建築した場合と同様に評価する。税対策効果はそのまま享受できる。固定資産税は信託会社が家賃収入の中から支払う。
・遺産分割協議や相続登記が不要となる。信託会社が自分で信託目録を変更する。遺言では不可能であった2次、3次相続時の受取人指定が可能となる。受益者に相続が発生しても賃料口座の凍結がない。遺言信託と異なり執行費用は不要である。*遺留分の減殺請求権は排除できない。
・共有名義の不動産でも、信託会社が所有者として賃貸経営を行うので、共有者に相続、破産・倒産が発生しても賃貸経営に影響はない。また、共有不動産でも信託物件の場合には投資目的での購入がありうる。
・日本に土地を保有する、国籍がない外国人について、土地信託を利用すると、融資可能性が出て土地活用が可能となる。
・事業が全て信託会社名義で行われるため、開発リスクや所有者責任・賠償責任を軽減することができる。反社会的組織チエックも可能。
〇不動産信託のデメリット
・不動産を信託するためには信託会社と金融機関の審査がある。*受託可能エリア、収益性、規模、担保力、遵法性(違反建築・旧耐震は原則不可)、調達レートも信託会社と金融機関が決める。
・信託会社への手数料(契約設定時、契約期間中)、信託登記料、物件調査料等が発生。
・信託不動産が赤字の場合、他の収益との損益通算ができない。損失の翌年繰り越しもできない。
〇信託監督人
受託者を監視監督する第三者。信託契約で設定したり、利害関係人の申し立てにより裁判所が選任できる。
〇受益者代理人
受益者の権利に関する代理権限を有する。信託契約等により設定する。裁判所に選任権は無い。
□土地信託活用事例「先祖伝来の土地の後継者がいない」
委託者:私 一次受益者:私 二次受益者:妻 三次受益者:私の弟 四次受益者:弟の子(甥) 妻との間に子がいないので、妻の兄弟に移転可能性があった。跡継ぎ遺贈型受益者連続信託にて、私の家系に財産を存続させることができた。
□不動産管理信託活用事例「将来は実子に資産を承継したい」
委託者:私 一次受益者:私 二次受益者:後妻 三次受益者:先妻との子 先妻既に死亡、後妻に連れ子があった。後妻と実施は養子縁組をしておらず、後妻が希望通りの遺言を書いてくれる保証がない
□不動産管理信託活用事例「二男には障がいがある。将来は長男家系に相続させたい。」
委託者:私 一次受益者:私 二次受益者:二男 三次受益者:二男の妻・長男 四次受益者:長男の子 二男に子はいない。二男に渡した不動産が将来お嫁さんの家系に渡ってしまうことになる。跡継ぎ遺贈型受益者連続信託にて、私の家系に財産を存続させることができた。
□土地信託活用事例「先祖伝来の土地の後継者がいない」
委託者:私 一次受益者:私 二次受益者:妻 三次受益者:私の弟 四次受益者:弟の子(甥) 妻との間に子がいないので、妻の兄弟に移転可能性があった。跡継ぎ遺贈型受益者連続信託にて、私の家系に財産を存続させることができた。
民亊信託を利用した不動産相続対策 覚書
あいきの相続・不動産鑑定
役員・同族・親族・関係会社間売買
商事信託を利用した不動産相続対策 覚書
2015年10月7日