あいき不動産鑑定・コンサルティング事業部, 不動産鑑定, 相続, 相続・遺産分割

民事信託を利用した不動産相続対策 覚書

□民事信託(家族信託)でよく利用される信託

 

〇遺言代用の信託 委託者が生存中は自身を受益者とし、死亡後は新たに受益者を指定する形の信託

ex.夫・委託者(受益者)、妻・受託者、夫(受益者)死亡後は子が相続 ・自身を受益者とする収益の分配については自益信託であり非課税

〇受益者連続型信託 受益者が死亡した場合に備えて2人目以降の受益者もあらかじめ指定しておく信託 年数制限がある。

・夫・委託者、妻・受託者、夫(受益者)死亡後は子が相続、まず長男が受益者、長男が死亡後は二男が受益者

 

 

□民事信託の問題点 ・信託を業として行うには、信託業法の規制を受ける。

 

・受託者の資金調達が困難。 ・現行信託税制は「受益者課税」「信託行為時課税」を適用しており、担税力の面で問題が生じる。節税にならない。

・受益者が特定していても、受益内容が特定されない場合もあるので、受益権の価額を適正に評価することが困難。受託者に裁量を与えるなどして将来の状況に応じて受益内容を変えることもある。

・受益者連続型信託について、第一次受益者が死亡後は第二次受益者に受益権が帰属し限定的な期間の受益権を獲得するにすぎないのに贈与税を支払うのは不合理である。

 

 

□具体的な民事信託活用事例

〇先祖代々の土地を直系卑俗に承継(姻族への移転を防止)

ex.父・委託者、二男の子A・受託者、長男X(第一受益者)、長男X死亡後はその妻Y(第二受益者)、Y死亡後は受託者である二男の子A(第三受益者)とする。 第三受益者になった時点で受託者と同一となり信託は終了する。

 

〇障がい者である子が一人残される場合

ex.夫X・委託者、信頼のおける親戚・受託者、夫X(第一受益者)、X死亡後はその妻Y(第二受益者)、Y死亡後は障がい者である子A(第三受益者)とする。

・自分と妻が亡き後障がい者である子の生活が心配、財産の定期的な管理が必要。妻無き後受託者がその責務を果たすよう信託監督官を定めることができる。

・成年後見より財産の管理運用を円滑に行うことが可能となる。

 

〇株式の複層化信託(受益権の分割) 株式を「株式議決権の指図権」、「元本・配当を受ける権利」に分割する。

ex.父X・委託者、長男・受託者、父X受益者(信託の全ての受益者とする)、X死亡後は「株式議決権の指図権」について100%を長男に相続させる。「元本・配当を受ける権利」については長男・二男・三男に均等相続させる。

 

〇収益不動産の複層化信託(後妻(子供無)の生活保障と先妻との子への財産移転を実現) 受益権を「収益受益権」、「元本受益権」に分割する。

ex.夫X・委託者、信頼のおける親戚・受託者、後妻・受益者(収益受益権)、先妻との子・受益者(元本受益権)、以上の遺言信託を設定する。

・受益権の評価

  1. 元本受益権:課税時期における信託財産の相続税評価額から次ロの価額を控除した残額
  2. 収益受益権:将来受けるべき利益の額に、課税時期からそれぞれの受益時期までの期間に応じた基準年利率による複利現価率を乗じて求めた価額の合計額
 

〇一般社団法人を受託者とする信託 ・賃貸マンションの管理運用

ex. 私・委託者、一般社団法人・受託者、私・受益者、私死亡後の受益者は妻、妻死亡後の受益者は子A・B。 一般社団法人:社員及び理事は私・妻・子AB、目的は信託財産の管理運用 メリット: ・信託契約により自分が認知症になった後も自分の収入が確保できる。

・信託契約により財産の相続人を2~3代後まで指定できる。

・一般社団法人を利用することにより1人1票で信託財産の運用に参加できる。

・受託者が法人となり安定し、個人資産との区分が明確。 ・同族会社の株式管理 信託財産は同族会社の株式

ex. 私・委託者、一般社団法人・受託者(株式議決権の指図権の行使)、私・受益者(配当を受ける権利)、私死亡後の受益者は妻、妻死亡後の受益者は子A・B。 一般社団法人:社員及び理事は私・子A、目的は同族会社株式の議決権行使(議決権の分散を防げる)

 

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