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日帰り温泉付保養所の鑑定  「系列会社間売買目的」

「先生、一件鑑定して欲しい物件があるんやけど」 公認会計士のA先生から久しぶりにお電話がありました。 A先生は書籍出版も意欲的に行っておられる大手事務所の所長さんで、温厚な先生です。

私:「A先生ご無沙汰しています」

「先生、こんな案件鑑定してもらえますか?」

私:「といいますと、どんな案件ですか?」

「B温泉地内の温泉保養所です。日帰り温泉として今利用していますが、保養所部分は使っていません。 系列会社間での売買を考えています。」

私:「・・・・」 正直私の手に負えるかどうか一寸ためらいました。 しかし愛妻から「依頼は絶対に断ったらダメ。受けてから考える。あなたなら絶対できるから。」と言われているので 思わず「大丈夫です!できます」と答えていました。

何故今回の案件について私の中で承諾するのに迷いがあったかと言いますと、 ホテル、旅館、ガソリンスタンド、総合病院等、他用途への転用が困難な事業用不動産の場合、 土地・建物等の物体についての評価の難度はもちろん上がりますが、 それ以上に収益価格の試算が難しいのです。 そもそも不動産鑑定額は「適正価格」と法的に認められる唯一の価格です。 それは公正な市場で存在しうる価格についての全方位、即ち3面を分析するが故に適正価格とされています。 価格についての3面とは、費用性・収益性・市場性です。

収益価格とは収益性に着目して求める価格です。 収益価格は、その不動産を最有効使用して得られる賃料が将来にわたってどれ位となるか、 数学的に求めたその合計額が合理的な投資価格であるという考え方で求める価格です。 賃料÷還元利回り=収益価格という式で表されます。 従って収益価格の要は賃料と還元利回りです。 評価にあたっては大前提として、現事業が盛業か合理的な予測として 将来にもわたって存続されるのかどうか判定しないといけません。 現利用状況が赤字続きの場合、その事業を廃止して、マンション用地として再出発を図った方が 不動産の利用としては最有効使用であるということもあります。 このような、そもそもの視点から現利用状況について判断の上、 不動産の評価を行うこととなります。

対象不動産は温泉町内築古年の温泉付保養所でしたが、現在は日帰り温泉として温泉部分のみを改修の上利用しており、 保養所部分については未利用でした。 未利用保養所部分は1000㎡近くありました。 日帰り温泉は結構な人入りで経営上も大分利益がでていました。 にもかかわらず日帰り温泉の売上から求めた収益価格は全体土地の価格にも充たない状況で、 現利用では不動産の経済合理的利用とは言えないことが判明しました。

「未利用の保養所利用は果たして可能なのか?高度経済成長時ならいざ知らず、今、保養所需要はあるのか?」 インターネット等で調べてみると、意外にも周辺地域で取引があるようでした。 リートでもリゾートリート等があり最近は保養所取引もメジャー化してきているようです。 本件の場合、温泉町内の温泉付保養所ですので、周辺地域の通常の保養所に比較しても取引ニーズがありそうです。

結局、最有効使用の観点から現況日帰り温泉利用は廃止の上、温泉付保養所として評価することにしました。 会計士さんからは「評価価格は購入時の価格に対して充分損失が出る価格です。」 と喜んで頂けました。当社ではこの手の事業用不動産の鑑定依頼が最近増えてきました。 鑑定士として興味深い案件です。

プライバシーに配慮し、一部フィクションを交えています。ご了承下さい。

あいきの不動産鑑定

 

 

あいきの不動産鑑定 ご利用者様の声

銀行支店長 匿名希望様

初めてお会いした時から親しみやすく、頼りにさせて頂いています。
なかなか鑑定評価をする機会がありませんでしたが、先生にご無理を申しあげ、私も勉強になりました。又不動産の情報もあれば教えて頂ければ幸いです。
となりの「人間国宝」おめでとうございます。
~ 当社より ~
ありがとうございます。
地方の大病院の鑑定でしたので、ご依頼の発端となる後継者問題等に思いを馳せながら評価作業を行いました。
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