不動産相続案件は通常税理士さんが財産評価基本通達に基づく路線価評価によって「みなし評価」の評価を行って、それに基づいて相続税の計算を行います。
農地、山林、原野につきましては、明らかに農地(山林、原野)として使うしかない(原野は通常雑草、灌木が繁茂している土地なので未利用地というべきですね)場合には、対象土地の固都税評価額に倍率を乗じて評価額を求めれば良いわけですが、市街地農地(山林、原野)の場合はちょっとややこしくなります。市街地ですので、一般的には現況が農地(山林、原野)であっても、すぐに又は近い将来宅地に転用できる場合が多いです。
この場合は、評価方式としては宅地となった価格-造成費として現在の価格を求めることになります(宅地比率方式)。他方で、市街地農地(山林、原野)でも、ちょっとやそっとでは宅地利用されないような農地(山林、原野)もあるのです。
その場合の評価は近傍の純農地(山林、原野)に倍率を乗じて対象地の価格を求めます(倍率方式)。
先の明らかに農地(山林、原野)として使うしかない土地、上記の市街地農地(山林、原野)の区分については国税庁「財産評価基準書」の「倍率表」に表示されています。
〇明らかに農地(山林、原野)①純農地(山林、原野)
②中間農地(山林、原野)
〇市街地農地(山林、原野)
*なお、農地については以上の他に 〇市街地周辺農地:市街地農地として評価した価額の80%の評価額があります。
さて、私の所には、「財産評価基準書」の「倍率表」で市街地農地(山林、原野)の相続評価について税理士さんからご相談があります。市街地農地(山林、原野)で宅地比率方式と規定されている土地について、「実態はそんなに高い筈がないので時価を見て欲しい」というご相談です。
不動産鑑定士は将来的に宅地となるような農地(山林、原野)については「宅地見込地」という呼び方をします。宅地見込地の鑑定においては宅地化されるまでの期間に応じて「熟成度修正」というものを考慮し、これが大きな減価要因となります。
また、市街地農地(山林、原野)の中には仮に造成して宅地化するとしたら過大な費用を要し、完成宅地の価格よりも造成費の方が上回り赤字となるような土地もあります。このような土地については経済合理性の観点から宅地化されることはまずありませんので宅地化の期待性がきわめて低い宅地見込地となります。このような土地の場合、鑑定の方法としては、純農地(山林、原野)等の価格に宅地化期待率を乗じて求めることになります。結果的には市街地内にあるにもかかわらず、純農地(山林、原野)の価格に近くなります。
意外と以上のような農地(山林、原野)がありますので、市街地でも宅地化が困難で長年放置された農地(山林、原野)の相続評価の場合はご注意下さい。
*写真はすべてイメージ画像です。
あいきの相続鑑定
あいきの不動産鑑定 ご利用者様の声
公認会計士・税理士 N様
先般、貴社には弊所のお客様の相談案件に関して評価が困難な土地の不動産鑑定意見書を作成して頂き大変お世話になりました。
実は、当該物件に関する評価依頼は、二度目(一度目は今般被相続人である兄の実弟が亡くなった時)でした。
まずもって不動産鑑定に関する費用は、相続人方にとって決して低いと言えるコストではないうえに、普段あまり不動産に携わっていないような一般の人達にとり不動産鑑定士に鑑定を依頼するという行為は、そもそも馴染みがないわけであります。
そのような状況において、二度に亘り相続人方が不動産鑑定意見書を取るという意思決定をなされたのは、やはりしっかりとした成果物を手にして納得されたからだと思っております。
そういった意味では、我々の本業を円滑に進めるうえでも貴社は心強い存在であり、引き続き良好なパートナーシップを継続できることを心より望んでおります。
N生いつもありがとうございます。
市街化区域内山林、再建築不可住宅地等大変な物件揃いでしたね。先生方の路線価評価段階で相当に評価額がこなれていると思いました。鑑定でそれ以上下がるか、現実の取引事例からどう価格の根拠を固めていくかに苦慮しました。
今回、相続人方の意見を統一していく会計士さん、税理士さんの苦労は大変なものだったと思います。
先生方の関与先様の問題解決にご協力できるよう今後も頑張ります。
他も見るこちら