民間鑑定を専門としていますと色々な案件の鑑定依頼があります。
今回は知り合いの紹介で、ある会社の社長さんから電話がありました。
「ホテルの売却を考えているが、幾ら位なのか鑑定して欲しい」というご相談です。
ビジネスホテルの評価は結構経験していますが、話を伺っているうちになんとなく様子が違っているので
「どんなホテルですか」と訊くと
「ラブホテルです」ということでした。
ラブホテルの評価は初体験!私の好奇心は一気に沸き上がりました。
社長さんにお目にかかってお話を伺うと高校を卒業後工場に修行に出て30歳前に独立。自分の工場で懸命に働き、40歳代で5億円もの貯金ができたそうです。そして、そのお金を基にレジャーホテル投資をスタート。その出で立ちからは不敵な男の自信が漂い、たたき上げ創業者独特のギラギラした得体の知れない迫力をもつ社長さんでした。
ところで、ラブホテルは正式にはレジャーホテルといいます。法的には「風営法」と「旅館業法」の規制対象となります。
レジャーホテル業界は、もちろん土地、建物、設備が競争力の要となる装置産業で、最低5年周期の設備投資が必要です。更に現在はビジネスホテル、シティホテルのデイユース等との業界を超えた競争が繰り広げられています。利用者のニーズも多様化し、リピーター確保に向け運営側には様々なサービスが要求されています。現実には「昔は良かったけど」という業界状況のようです。しかしパチンコ産業と同じで斜陽気味でも現金商売の魅力は褪せていないようです。
不動産投資物件としては、世間ではなんだか大きく儲けることができそうな不動産と思われがちですが、 少し前にレジャーホテルファンドが破綻した話もあるように、業界自体が相当な過当競争にあって現在はむしろ薄利多売状態であるほか、業界がグレー、金融機関の融資がつきにくい、高利回りで物件を購入できても運営力により収益差が出るため安定した事業継続は不透明等、様々なマイナスの特性もあります。
また、建築規制が厳しく、新規にホテルを建てて営業許可を取って事業開始という事案は少なく、従来の建物に営業許可をもつ運営会社をつけて売却というケースも見られます。
古いホテルの場合、土地と建物の価格を合算して求めた積算価格の他に、短期でホテル運用した後、ホテル取壊してマンション用地としての売却、というストーリーを前提とした収益価格や単純にマンション用地等としての更地価格からホテル取壊し費用を控除した価格等も考えていく必要があります。
結局社長さんはレジャーホテルを何軒も所有しており、売買の経験、賃貸住宅への改修等様々な経験をお持ちで、おまけに今回のホテルも買受け人の当たりもあるようで、不動産鑑定士がどのような値付けをするのか大変興味があったとのことでした。
興味があって鑑定をとって頂いたのはさすがに初めてのことでした。
草食系男子が増加している日本。レジャーホテルの経営は更に大変になるのでしょうか。
*個人情報保護のため一部フィクションを交えています。写真はすべてイメージ画像です。
あいきの不動産鑑定
ラブホテル(レジャーホテル)の鑑定
2016年12月16日