先日、個人の方Aさんからご相談がありました。その方は、大阪にお住まいで、ご実家はとある地方都市にあります。先日、親の不動産を相続で承継しました。幸い相続争いはなく、スムーズに引継ぎが行われた様です。相続不動産の中に農地も含まれていました。農地といっても鉄道本線から徒歩数分の市街化区域内に位置しますので、「開発前の宅地」です。この土地について、今回、処分を考えておられます。比較的利便性が高い道路条件も良い土地ですので、従前から大手も含めた住宅メーカー複数社が購入の話をもちかけてきていたようです。売却の話を今回現実に進めるにあたって、ご自身でも適正な売却価格を把握するために当社にご相談がありました。
Aさんが対象地の価格を鑑定するに際して、①今の農地状態の価格、②造成費、③宅地になったとした場合の価格の3つを出して欲しいという依頼でした。少し変わった希望ですので、理由を聞きましたところ、先の購入希望のあった数社の中に売却先候補をAさんは決めておられた様です。その業者が、今の農地状態を造成して宅地にした場合の金額水準から、標準的な造成費を控除して、今の農地状態の対象地価格を求め、購入希望価格として算出してきたようです。
私はAさんの依頼内容に応えるべく、現実の売買価格として適正な水準を探りました。造成費については大概の相場(造成事例)がありますので、それを基に専門業者数社からヒアリングを行い求めました。
造成後の宅地価格につきましては、駅周辺を見渡して、過去2年以内の取引から規模の大きい住宅地の取引事例を選択して比較を行い求めました。
農地状態の価格につきましても、造成後宅地と同じ様に、対象地と代替競争関係に立つ類似の事例を選択して比較を行い求めました。
先の業者は造成後の宅地価格から造成費を控除して農地状態の価格を求めていますが、これは開発価格というもので、この価格も大事ですが、一番大事なのは市場での取引価格です。
さて、以上の様な方法で対象地の適正価格を求めましたところ、いずれも業者が提示してきた価格より4割程度は高い価格となりました。総額にして数千万円の差が出ました。
これを聞いてご本人はびっくりされていました。もし、買手が逃げたら私の責任になっても辛いので、私の方で力のある知り合いの業者にそれとなく購入の打診をしてみたところ、購入希望があったので、私の方でも最悪リスクヘッジしてあげられそうで、ホッとしました。
一般の戸建住宅やマンションならある程度に価格は収まりますが、特殊な不動産の売却価格はこのような感じで、専門業者でも大雑把な所で購入価格を査定しているのが実態なのです。
Aさんの様に疑問をもたれた場合には不動産鑑定士に相談した方が良いかもしれません。