2013年07月24日
最近、不動産取引が活発なせいか、大規模な不動産の鑑定相談が多くなってきました。
先日、税理士さんから電話で、兵庫県内のある地方都市の30,000㎡近くある土地について、経営者と会社間で売却する場合の売却価格に関わる鑑定相談がありました。
対象地は現在のところ田や畑として利用されています。その地方都市の中心ICすぐ近くの交差点に位置し、いわゆる一等地です。そのような立地にある3㏊近い土地ですから、役所に行政規制の調査にいっても、職員の方々が「何か利用計画があるのですか?」と興味津々です。
ところで、ある土地の鑑定を行う場合、一番大事なことは、その土地をどのように利用することがその土地が経済価値を最も生み出すか?です。これを不動産鑑定の世界で「最有効使用」を分析するといいます。
調査によると今回の地方都市は、様々な事情から、経済的に停滞しており、工場地の進出についても、大型店舗の進出についても、どちらについても近年それ程進んでおりません。現地で対象地周辺の様子を見ると、やや店舗の方が優勢かなと思われますが、なかなか最有効使用の判定が難しい土地でした。
何より困ったのは、周辺地域の取引事例等からみると、仮に最有効使用を工場地として対象農地の価格水準を考えると約6億円、他方、仮に店舗用地として対象農地の価格水準を考えると約10億円となり、約1.5倍以上も差が出てくるのです!
「さて、どう値付けしよう?」色々と考えてみた結果、市場で対象農地が店舗用地利用される確率を60%、工場地利用される確率を40%と予測して、両発生確率を加重平均して価格を出そうと思いました。結果として、準工業地域内の土地としてはよい価格水準になるように思いました。
依頼者の税理士さんに以上の様な事情を説明しますと、ここに来て、「対象農地について店舗利用する前提での売買です。」と教えてくれました。
「え、そうなんですか。」それなら事情が大きく変わり、当方としては対象農地の最有効使用を店舗用地として鑑定すべきことになります。評価の方向性がハッキリとしたのは良かったのですが、同じ土地でも最有効使用の判断如何で、大きく価格差が出る特徴的な案件でした。
猛暑の中、鉄砲玉のように現場に出て、「最有効使用は工場か店舗か?」と、3haの農地の中や周辺をぐるぐる回ったり、分散所在するお役所を走り回ってあれこれ調べて、すっかり真っ黒に焼けてしまいました。
「さあレポートにまとめて、次の案件。次も、住宅団地横の大規模山林約1万㎡、また大変だぞ。」
ある地方都市の一等地 市街化区域内農地 最有効使用は?
2015年5月14日