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大規模商業施設 借地権・底地の鑑定


先日、ある全国的な法人の系列会社から「底地」の鑑定依頼がありました。 「底地」というのは、借地権の付着した土地の所有権のことをいいます。

早速、部長さんが弊社にお越しになりお話を伺うと、兵庫県内のある都市の中心地近くにある何万㎡にも及ぶ路線商業地で、地元では有名な大型スーパーが、事業用定期借地権で営業していました。 何万㎡もある商業地となると、さすがに兵庫県内にそれ程多くはないし評価額も何十億となり、これは是非、経験のために実務研修中のハマちゃん女史に評価をやらせてみようと思いました。 それに、今回の鑑定は4年前に他所の鑑定会社が同じ不動産について鑑定しており、その時の鑑定書も借りることができているため、彼女の勉強のためにも格好の教材にもなりそうでした。 ハマちゃんは、昨年入社した実務修習生で、ガッツがあり弱音は決して吐きません。私から一通りの説明を聞くと、ハマちゃんは雨の中現場調査に出掛けていきました。 「この不動産だと現場を歩き回って1時間ぐらいは必要だなぁ」と思いつつ、彼女を元気に送り出しました。

今回の鑑定ですが、2つの点で問題があると思いました。 1つは、何万㎡にも及ぶ大規模商業地で、周辺には類似の商業地が無く、類似の取引事例も無いこと。もう1つは、底地という権利関係が特殊な物件の評価であり、評価する主体によって評価額に差が出ることです。 今回の鑑定は以上の2点が重なって、下手な評価だと大きく評価額が狂ってしまう恐れがあります。 当のハマちゃんはあまり気にしていないようですが・・・・・。

さて、今回の土地の評価は底地としての評価ですので、①割合法と②収益還元法という方法を用いて評価を行うこととしました。 ①の方法ですが、借地権の取引が行われる地域内の借地権は、更地価格に対して借地権の取引価格割合というものが形成されているものです。更地価格に対する借地権の取引価格割合が例えば60%、70%とすると、底地価格の更地価格に対する割合は100%-60%、70%で各40%、30%となります。その底地割合を更地価格に乗じて底地価格を求めます。今回は普通借地権ではなく事業用定期借地権なので、借地権割合の把握に一工夫が必要です。更新が前提となる普通借地権に比較し、定期借地権は通常一定期間で契約が終了するので、一般には普通借地権より権利割合は小さく、経過期間、残存期間に応じて借地権割合が変化します。

②の方法は、底地というものが借地権の設定された土地所有権であることから、その経済的価値の本質について、地代の収授権であるという考えに基づいています。定期借地権については、底地を購入する投資家の立場から見ると、定期借地権の存在する一定期間地代の収授、契約終了によって更地が自分に却ってくることを期待して、それにふさわしい対価を支払うという考え方から価格を求めます。 簡単にすると、次のように定期借地権付底地の収益価格を求めます。 年額地代 × 残存年数 + 復帰する更地の価格 そして、①、②の各価格を関連付けて底地の価格を求めます。

今回①の価格を求める途中で更地価格を求めるに際して、対象地が何万㎡にも及ぶことから、水準の把握がなかなか厄介です。 ところで、大規模地の価格の求め方には2つのアプローチ方法があります。 a.類似の規模の取引事例がたくさんある場合には、それらの取引事例から直接求める方法、b.類似の規模の取引事例がない場合、対象地付近の普通規模の土地の価格を求めて、それに規模による補正を入れて対象地の価格を求める方法です。 今回はb.を選択することにしました。

普通規模の土地は500㎡程度、対象地はそれに対し何万㎡にも及ぶため、いったい規模格差がどれ位かは大変難しい問題です。 私の鑑定業務経験による勘では、30%以上45%以下程度と感じました。 実際他の鑑定会社が発行した鑑定書をみると、私と同じように、b.の方法を選択し、規模格差として△40%としていました。 この規模格差が対象地の価格を決める生命線ですので、過去2年以内の兵庫県内の1万㎡以上の商業地取引事例を収集しうる限り全て観察し、各取引事例の付近にある普通規模の土地との規模格差を分析し、市場の実態に応じた数値の把握に努めました。 その結果、対象地のように都市中心部近くにある大規模商業地は意外と規模格差が小さく△20~30%程度と判断されました。中には稀少性から+15~+30%となっているケースもありました。悩んだ末、対象地の規模格差を△25%としました。

今回の評価額は更地の規模格差が原因となって、結果である底地の鑑定額が、他所の鑑定会社が出した鑑定額より何億円も高くなりました。 これについて本社と相談された法人の担当部長さんから色々とご質問もありましたが、しっかりご説明しますと、「よく分かりました。これでいきます。ありがとうございました。これからもよろしくお願い致します。」と言って頂き、大変嬉しかったです。

さて当のハマちゃん、彼女が一生懸命作ってくれた原稿には私がバッサバッサと手を入れましたが、ハマちゃんはくじけず、次なる課題である固定資産の大量評価に猛然と取組んでいます。さすが。

 

あいきの借地権・底地鑑定

 

 

あいきの不動産鑑定 ご利用者様の声

 


会社役員 匿名希望様

会社の節税対策を講じたのですが、その一環として実務価格と簿価との乖離が大きい不動産を関連会社に売却し、売却損をだしました。その際に土田先生に不動産鑑定評価をお願いしました。この売買価格が適正価格か否かで税務署から否認されるのを避けたかったからです。
私の無茶な意向を聞いていただきながらも最終的には、何処に出しても間違いない価格に落ち着き、お墨付きを頂いた様な安心感を得ました!
仕事もプライベートもアグレッシブな土田先生!これからも頼りにしてますよ!!

~ 当社より ~
いつもお世話になっております。
ありがとうございます。不動産の世界は幅も奥も拡く、匿名希望者様には色々とご教示いただき感謝しています。今後ともよろしくお願い致します。
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