実務修習生のハマナです。
当社の業務の1つである「広大地判定」。
「開発道路等の公共公益的施設用地の負担が必要な戸建住宅地」
が最有効使用と認められれば、
相続税を大幅に減らすことができます。
税理士さんから見ても上記が明らかな案件は、
不動産鑑定業者に依頼はきません。
マンション用地じゃないの?
開発道路いらないんじゃないの?
そういうグレーな案件に対して、
不動産の専門家としてはっきりシロ!と説得するのが、
不動産鑑定業者の「広大地判定」です。
実は私は、この「広大地判定」という業務に対して
誤解をしておりました。
一般的な不動産鑑定評価は、その不動産の
「経済価値=価格」
を出すことがゴールです。
「広大地判定」は最有効使用を示して終わりですから、
言ってみれば鑑定評価の途中までの業務。
「まあ、広大地判定は鑑定評価の半分くらいの時間と労力と能力でできるさ~♪」
と甘くみていました。
↑誤解です。
「広大地判定」に不動産鑑定の真髄あり!とも言える深い深い内容なのです!
それを書きたいと思います。
さて、広大地を判定するときには、2つの反論を潰す必要があります。
それが先に上げた
①マンション用地じゃないの?
②開発道路いらないんじゃないの?
です。
ここで、最有効使用を確定する上で、
大事なポイント4つを述べたいと思います。
まず1つ目は、現況の利用状態です。
現況が周辺環境とマッチしておらず、最有効使用でない場合は多々あります。
でも、今建ってるからには、何かその時、その人にとって
合理的な理由があったはずです。
マンション適地かと疑われるような土地でも、
現在は大規模戸建住宅が建っていたり、
一部に戸建住宅が建ち、残りは駐車場として使用されていたりすれば、
戸建住宅地として適しているという理由の一つとなります。
逆に、一体として共同住宅、スポーツ施設、
店舗、工場、倉庫等として使用されていれば、
それが最有効使用でないと言うからには、
次に上げるポイントの中で、
それなりの根拠を示さなければなりません。
次に2つ目は、周辺環境です。
この地域は、戸建住宅が多い、マンションが多い、工場が多い・・・。
この判断も簡単そうに見えて、かなり専門家の目線が必要です。
道路の配置状況や、地勢、過去地図などから、
地域の境がどこにあるのかを判断しなければならないからです。
以前の案件のことです。
対象地の前面道路沿いにかなりマンションが建っていて、
この並びで①マンション用地じゃないの?の疑念を晴らし、
「戸建住宅地」というのは難しいかなと思いました。
でも現場に行ってみると、マンションが並んでいるあたりから、
急に道路が上り坂になり、地盤面が上がっていました。
過去地図で確認すると、マンションが建っていた地域は、
対象地よりも、かなり後から開発された地域であったことが分かりました。
よって、対象地はマンション地域ではなく、
戸建住宅地域と確信を持って判断できました。
また、周辺で戸建住宅地開発が、いつどのように行われているかも
開発登録簿によって調査します。
道路を整備する開発が主流の地域であれば、
②開発道路いらないんじゃないの?に反論する材料となります。
そして3つ目は、市場状況です。
最有効使用は、机上の話であってはいけません。
まず、そこの戸建住宅を建てたら欲しい人がいるのか。
規模・価格帯によっては需要者がいるなら、その水準はどうか。
いくら現況戸建住宅が建ち、周辺も戸建住宅が建っていたとしても、
そこで戸建住宅用地として開発して、買いに来るエンドユーザーがいなければ、
もちろん開発業者も土地を買いに来ません。
その検証が必要です。
さらに、①マンション用地じゃないの?の疑念を払拭するためには、
賃貸マンション需要や、分譲マンション需要も調査します。
エンドユーザーの需要があれば、
投資家やマンション開発業者の需要はあるからです。
最後4つ目は、試算価格です。
実は、この試算価格を使った検証ができることが、
不動産鑑定士の醍醐味なのです。
前にあげた3つのポイントは、あくまでも状況的な判断の話です。
でも、現況の利用状況、周辺の環境、市場状況を分析することにより、
戸建住宅地とする場合であれば、
区画割りや、販売価格、販売期間が想定でき、
開発業者がいくらなら買いに来るか数字が出せます。
共同住宅地とする場合であれば、
家賃や、建物グレード、空室率が想定でき、
投資家がいくらなら買いに来るか数字が出せます。
数字で比較するのは、状況的な判断よりも説得力が増します。
①マンション用地じゃないの?に対しても、
高い価格が出た方が最有効使用。
はっきりしています。
②開発道路いらないんじゃないの?に対しても、
数字で比較して答えを出すことができます。
開発道路を作る場合には、
住宅用地として販売できる面積が減ります。
ただし、需要にマッチした規模・形状で売ることができるので、
販売単価は上がります。
開発道路を作らない場合は、
住宅用地としてすべて販売できます。
ただし、開発道路を作らなければ、
必ず規模の大きい住宅地となるか、
旗竿敷地や間口狭小奥行長大といった形状不良が出ますので、
販売単価は下がります。
または、販売費用等のコストが上がるでしょう。
これらを加味した上で、価格を出して比較することができるのです。
そして、高い価格が出た方が最有効使用(最有効開発計画?)。
はっきりしています。
(2回書きました)
不動産鑑定士の「広大地判定」は、
最有効使用を価格で検証できる。
だから安心だし、
鑑定評価のエッセンスがつまった、
「不動産鑑定の真髄」と私は言いたいです。
あいきの相続・鑑定業務はこちら
「広大地判定」に不動産鑑定の真髄あり?!
2015年6月26日