「土田先生ご無沙汰です。弁護士のAです。」さる大手事務所の代表弁護士さんから久しぶりのメールが届きました。とある大型飲食店のオーナーが「家賃増額請求を受けて困っている」とのご相談です。
実は先日も同じ様な相談を受けたところでした。「ここのところ、飲食店の状況がやや好転したのを機会に家主さんサイドが賃料増額請求に勢いづいているのかもしれない」とっさに思いました。
いづれも既に弁護士さんが付いており調停段階という方々です。家主サイドの増額請求額はどちらもすさまじく、3割以上というものでした。しかも、コロナ禍で家賃の減額もありませんでした。
各地の繁華街もようやくコロナからの回復基調に入り、賑わいが戻りつつあります。それとともに、家賃の水準も上昇しつつあります。しかし、これは新規賃料の話で、継続賃料改定の場合は現行の支払賃料があくまでも基準となりますので、新規賃料の動きに必ずしもダイレクトに呼応するものではありません。
継続賃料の場合はあくまでも、①現行賃料改定時から現在までの経済事情の変動をベースに、②現在までの賃料改定の経緯に基づく諸般の事情、を勘案することが賃料判定のメルクマールとなります。
ご相談者の場合、飲食店については、ご存じの通り、コロナ禍で最低の経済事情下にありました (特に大型店の多くは宴会を中心に運営しているため、売上げベースで大きな苦況を強いられていました)。一般経済は平常化しつつありますが飲食店業界は累積した赤字の重さを考えるとようやく薄明かりが見えかけてきた程度に過ぎません。多くの飲食店が廃業しましたが、中にはまさかというような老舗も含まれています。以上が①に関して考えられます。
②につきましては、現在でしたら、コロナ禍での家主の対応などがあると考えます。例えば、賃料減額に対する対応等です。
私共へのご相談は弁護士さん同道というものが多いです。相手方から家賃増額の鑑定書が出ている場合は、それに対する徹底的な検討を行い、妥当性、偏向性等に対して、弁護士さんが今後の訴訟追行上利用していただけるよう、文書とデータをサービスで提供しています。
不動産鑑定士の職責は適正賃料の評価ですが、裁判の場合には、できるだけ、依頼者の立場に立ってお手伝いするよう心がけています。
事業運営において毎月毎月の家賃は空気みたいなものですが、だからこそ、わずかな変化でも堪えるものです。1%の変化に対しても妥協してはいけないと思って数字を検討しています。
あいき不動産鑑定 土田剛司