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トップページ > 借地権・底地の不動産鑑定
借地権、底地の権利関係 イメージ図
借地権の不動産鑑定
借地権 底地 地代 一時金の関係
この場合、借地人は土地価格のうちの借地権価格分を取得すると考え、賃貸人(所有者)が有する底地部分の利用対価に見合う額について借地人が地代として支払うと考えてよいと思います。これを底地側からみれば、地代の収益還元価格が底地価値といえます。
これに対して難しいのは、借地権設定時に設定権利金の授受がなく、しかも地代が著しく低廉な場合です。経済合理的行動としては設定権利金が支払われない場合、底地部分の利用対価である地代は通常高位に設定されます。
先の場合には、借地権設定の合意対価(設定権利金)がないのに、底地の収益価値が低く計算されるという現象が起こります(反面、設定対価のない借地権価格が高位に計算されます)。この理論矛盾を回避して、正常な価値を求めるには、地代を適正値に補正したり、土地の用途に応じた一般的な借地権・底地割合を基に判断を行ったりします。現実の取引事例から把握される借地権底地割合は単純ではなく大変幅がありますので、対象地における割合を判断するのはかなり難しい作業です。
更に、一時金には借地条件変更承諾料、更新料等実質的に観て様々な内容があり、借地権や底地の価値を直接増減させる要素となりますので、将来の授受動向も含めて注意が必要です。
以上のように借地権・底地、地代、一時金の価値を求める場合には、相互にフィードバックしながら、妥当な価値を探っていくような作業となり、評価する主体によって価格差が生じ易い案件といえます。
借地権の特徴
借地権価値とは
底地所有者に売り渡す場合は、相続税路線価を基にした借地権割合を更地価格に乗じた価格が合理的と考えられます。
第三者との売買の場合には、
①当該借地権又は当該借地権付建物を利用して行う事業等を生む総収益に基づく収益価格、あるいは、
②適正地代と現行地代に差額がある場合は、この差額に基づく収益価格等を借地権価値とする考え方がありますが、取引実例がきわめて少ないためやや説得力に欠けます。
借地権の不動産鑑定
このように借地権の価格は地域性や契約内容の個別性に影響を受けるため、借地権の存する地域及び借地権の契約内容の特性等を分析していく不動産鑑定は有効性を発揮します。
借地権価格を求める場合には、地主に譲渡する場合と、第三者に譲渡する場合の二通りが考えられます。各場合で、価格が大きく変わってきますので留意が必要です。
以下の場合にも不動産鑑定の有効を発揮します。
- 借地契約が満了し、更新する場合の「更新料」の不動産鑑定
- 借地権を譲渡する場合の「譲渡承諾料」の不動産鑑定
- 借地契約の条件を変更する場合の「条件変更承諾料」の不動産鑑定
- 借地上の建物を増改築する場合の「増改築承諾料」の不動産鑑定
借地権の不動産鑑定の方法
①借地権価格の更地価格に対する取引割合を把握する方法
②借地権上の最有効使用建物が生み出す収益を分析して、借地権の収益価格を求める方法
③適正な地代と現行地代との差額のうちの市場需要がある部分の集積として求める方法
以上の3つの価格を求めてそれらを関連づけて鑑定額を求めます。
以下、借地権価格についての留意点を上記各方法と絡めて述べます。
借地権割合
しかし、この割合の根拠は路線価を調査する際に不動産鑑定士に対して調査した数値を基に作っており、当の不動産鑑定士が市場から取引割合を把握するのは困難と考えています。
その理由としましては、借地権の取引事例を収集するシステムが構築されていないことによります。今後我が国で借地権の利用が更に活性化することがあるようでしたら、このようなシステムができるかもしれませんが、今は未定です。
路線価に付属する借地権割合は借地権割合+底地割合=100%(更地割合)を前提として、付けられています。ところが実際の借地権価格+底地価格≦更地価格という関係です。
なぜかと言いますと、借地権や底地単体の価格は借地契約による使用制約があったり、融資が付きにくい等により減価が生じる場合が通常です。
従いまして、路線価に付けられている借地権、底地割合は借地人と底地所有者間における売買では有効かもしれませんが、第三者との売買では注意をしなければなりません。
一般に商業地で繁華性が高いと借地権割合が高く、住宅地で利得性が低いと借地権割合が低いという傾向はみられます。
借地権の収益価格
このことから、借地権から得られる収益は一般に高くなります。ただ、投資物件として、借地権を考えた場合、様々なリスクがありますので、還元利回りも更地に対して高くなるものと考えられます。
賃料差額還元
建物時価評価
建物の時価の判断は大変に難しいので専門家の判断が有効となります。
底地の不動産鑑定
底地の特徴
このような長所が、企業の事業用借地ニーズの高まりとともに拡大する不動産投資市場でも見直されてきています。しかしながら、底地にもデメリットがあります。売買の際に担保的性格がなく、現金取引に限られてしまうことから流動性が低いことや、地代収入の割に課税上の評価額が高いことなどです。
底地価値
底地については、取引実例がわずかながらあります。借地人との取引では底地割合を使うのもよいでしょう。
旧借地法に基づく底地の場合、地主側に契約更新を拒否するのが困難であり、「土地が返ってこない」と言われます。毎月の地代は半永久的に得られますが、更新復帰期待値はゼロに近いものとなる場合が多いです。
この場合、底地の経済価値は、更地復帰価格は考慮せず、年額地代に基づく純収益等による収益価格が適切です。事業用定期借地権が設定された底地の経済価値については、定期借地権存続期間における地代の総和と予想される更地の期待価値の合計に基づいて求める事が出来ます。
底地の不動産鑑定
底地価格を求める場合には、当該借地人に譲渡する場合と、第三者に譲渡する場合の二通りが考えられます。
底地を当該借地人に譲渡する場合、借地人は借地契約によって制限されていた様々な利用制限がなくなり、借地権付きであった土地が完全所有権となって、利用価値、市場性、担保価値が回復するため、第三者に譲渡する場合の底地価格に比べて増分価値が生ずる可能性があります。
鑑定評価において、第三者に譲渡する場合の価格を正常価格といい、当該借地人に譲渡する場合の価格を限定価格といいます。
底地の正常価格を求める場合も判断が難しいですが、限定価格となると増分価値の分析等が必要となり不動産鑑定士の鑑定評価が有用です。
底地の不動産鑑定の方法
①底地価格の更地価格に対する取引割合を把握する方法
②地代を収益還元する方法
底地割合
もっとも、市場における底地取引割合を収集しても大変な幅があり(例えば30~130%等)、結局、各借地権の個別性が大きく底地取引割合にも反映しているため、対象底地の取引割合を事例から判定していくのは骨が折れます。
注意を要するのは、①底地の第三者間取引と、②底地所有者と当該借地人間取引の場合とでは、底地割合が異なるということです。
②の場合は底地と当該借地権の所有者が同一人となることによって、同一人が所有する更地となります。この場合、上記借地権割合で述べましたように、借地権、底地単独で有していた借地契約による使用制約に基づく減価や融資が付きにくいといった減価が更地となることによって解消され、プレミアムが生じます。
従って②の場合底地割合は①の場合よりも高くなることになります。
因みに、かつて行われた日本不動産鑑定士協会による底地実態調査によると、全国的に見て底地の第三者間取引における取引価格の更地価格に対する平均的割合は、ほぼ30%に収斂した、という結果が出ています。
地代の適正化が必要な場合もあります。
留意すべきは机上の空論的な価格をとらないよう、適正な地代はもとより、改定可能なライン、改定可能性等極力現実性を反映するようにしなければなりません。
底地の還元利回り
もっとも、この場合も相当広い幅で事例が観察されますので(ex.1.0~9.0%等)、対象底地の借地契約の個別性を充分に検討して、適切な利回り水準を判断していく必要があります。
一時金の性格
① 権利金 借地権設定の対価、賃料の前払等
② 保証金 債務不履行の担保(不履行損害額を控除して契約終了時に返却)
③ 更新料 更新後期間の買取り、更新拒絶権放棄の対価
④ 譲渡承諾料・名義書替料 借地権譲渡についての地主承諾の対価、地主の不利益補填
⑤ 条件変更承諾料 借地条件変更(ex. 非堅固建物から堅固建物目的へ)の対価
⑥ 増改築(建替)承諾料 借地上建物の増改築(建替)についての承諾対価
一時金の一般的水準
① 権利金 更地価格×借地権割合、賃料の数月分
② 保証金 賃料の数月分
③ 更新料 借地権価格×3~5%、土地価格の2~4%
④ 譲渡承諾料・名義書替料 借地権価格×10%
⑤ 条件変更承諾料 更地価格×10%
⑥ 増改築(建替)承諾料 更地価格(5%程度)×1~3%
一時金と借地権価値・底地価値との関連(一般的な場合)
① 権利金 設定権利金として借地権価値相当額とみてよい場合があります。賃料前払いの場合は 底地価値が増価します。
② 保証金 運用益部分が底地価値の増価となります。
③ 更新料 底地価値が増価します。
④ 譲渡承諾料・名義書替料 底地価値が増価します。
⑤ 条件変更承諾料 借地権価値が増価します。
⑥ 増改築(建替)承諾料 借地権価値が増価します。
借地期間について
旧法借地権と普通借地権の主な違い
借地権の存続期間満了時以降において借地上に建物が存在しない場合:旧法借地権の場合は、存続期間満了後に借地権者が土地を継続使用していた場合、その利用が駐車場や資材置場であるならば、地主が遅滞なく異議を述べれば、正当事由がなくても借地権は消滅します。一方、普通借地権の場合は、同状況においては、法定更新の規定が適用されず、地主は異議を述べなくても借地権は消滅します。
借地期間中に建物滅失した場合に借地期間を延長する場合:旧法借地権の場合は地主の「遅滞なき異議」が必要。普通借地権の場合は地主の「承諾」が必要。普通借地権の場合は地主の積極的なOKが必要ということです。
(普通借地権のみ)更新後の存続期間中の建物滅失時の借地契約解消:普通借地権については、更新後の存続期間において、借地権者が地主の承諾(又は裁判所の許可)を得ないで残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、地主は地上権の消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができ、当該請求又は申入れから3ヵ月を経過したときに借地権は消滅します。
(旧法借地権のみ)建物朽廃による借地権の消滅:法定存続期間中(最初の存続期間であれ更新後の存続期間であれ当事者間で有効な存続期間の定めをしていなかった場合)に限って建物が朽廃した場合に旧法借地権は消滅します。
借地期間を考慮した底地の鑑定評価方法について
例えば、地主の自宅が火災により焼失、建替費用を捻出することができないため、借地上に住む必要があるという事情が地主側にはあるが、一方、借地権者は容易に引っ越し可能な若者であるという状況であるというようなことを可能な限り事情を伺って、地主の正当事由が認められるであろうと判断できる場合以外は永久還元法を適用するのが無難であると考えられます。
また、旧法借地権と普通借地権の違いによる評価上の判断としては、借地権の拘束力の度合いを考えると、普通借地権の場合は旧法借地権の場合より還元利回りを低くするというのが一つの方法として考えられます。 以上の様に、借地権の存続期間をできるだけリアルに予測した鑑定評価を行う必要があります。